2022年10月16日

10月・11月の着物の文様 ビギナーさんにもおすすめの柄をご紹介

10〜11月の着物の文様 ビギナーさんにもおすすめの柄をご紹介

こんにちは。
いせやスタッフのF です。

 

街路樹の色合いが日々うつろうこの季節。
秋風が吹くたびに、少しずつ黄金色に近づいていきますね。

 

過ごしやすい気候は、着物好きさんのおしゃれ心にも追い風を吹かせてくれているようです。

 

「来週末に久しぶりに着物仲間たちとの食事会があるので、
いまの気分を盛り上げてくれるコーディネイト教えていただけますか。
まだ、あまり秋らしい柄とかを持っていなくて、どうしたらいいか困っています」

30代のお客様・A様から、このようなお話をいただきました。

ということで、いま着たい文様についてお話ししてみたいと思います。

 

 

秋の実りを楽しむ 十月(神無月)、十一月(霜月)に着たい文様

季節を少し先取るくらいがおしゃれとされる、着物の柄。
いまオススメな文様には、下記のようなものがあります。

 

十月

秋祭、稲穂、菊、紅葉、竜田川(たつたがわ)、葡萄(ぶどう)、銀杏、柿、栗、どんぐり、山茶花、吹き寄せ、蔦、松葉

 

十一月

散り紅葉、吹き寄せ、山茶花(さざんか)、唐草、松葉、菊、枯山水(かれさんすい)、雪輪、雪吊り、蓮根、柚子

 

実りの秋のめでたさを寿ぐようなもの、
冬に向かうことを感じさせるものなどが、多く見られますね。
中には、パッとイメージしにくいものもあるかもしれません。例えば……

 

「竜田川」

竜田川と紅葉

「千早ぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」(在原業平)

百人一首などに詠まれたり、上方落語の演目(千早振る)になるほど、紅葉の名所として有名な奈良県の斑鳩町(いかるがちょう)・竜田川の光景。
そこから、流水+紅葉の組み合わせで描かれるようになったのが「竜田川文様」で、着物や帯の柄としても人気があります。

 

「吹き寄せ」

落ち葉の吹き寄せ

秋風に吹かれて寄せ集まってきた落ち葉たち、といったら分かりやすいでしょうか。
その心象風景が美しく、和菓子や和食メニューなどにも使われ、紅葉、いちょうの葉、銀杏の実、松葉や秋野菜などが、色とりどりに盛りつけられます。

 

雪輪と吹き寄せ柄の着物
↑ 雪輪と吹き寄せ

 

 

「雪吊り」

兼六園の雪吊り

立木を、降り積もる雪から保護するために、枝を縄で縛る冬仕度。
秋になると金沢の兼六園などで見られるようになる光景で、円錐形に吊られた様子が、秋の風物詩として、工芸品やきものに美しく描かれます。

 

こういった心象風景を楽しむ感性は、日本人らしいですね。

 

 

なるべく長い期間着たいなら
「デザイン化された文様 + 色合わせ」で季節感を演出

A様のように、まだ何枚も着物を揃えられていない方からよく聞かれるのは
「季節限定の着物は、とってもおしゃれだけど私にはまだ贅沢。
とりあえずはなるべく季節を問わない柄から揃えないと」

 

確かに、旬にしか着られない文様で全ての季節に合わせた着物を揃えるには、少し時間がかかりますね。

でも、少しでも季節感が感じられるおしゃれをしてみたい!
そんな方は、こんな合わせ方をされてはいかがでしょうか。

 

青楓から紅葉へ

例えば、同じ「楓(かえで)」でも、絵画的、写実的に描かれたものは、いかにもいま色づいて紅葉している「紅葉(もみじ)」を表現しています。
けれど、デザイン化(文様化)された「楓」であれば、「青楓(あおかえで)」の表情も含んだ「楓」のデザインとしてとらえられます。

 

着物の楓柄

 

青から季節を経て、黄色、朱色から燃えるような赤を経て、最後は茶色味を帯びて落葉。その変化を含んだ楓紋。
小紋や帯などを選び、そこに季節によって、春ならば若草色の帯揚げを合わせて清々しい青楓を演出。秋口になったら、黄色や朱色、海老茶色など温かみのある秋色を合わせて、秋感を増しましに。

 

吉祥文様の代表格の一つ「菊」

さらに、それが代表的な吉祥文様でもある「菊」の江戸小紋などであれば、さらに着られる期間も意味合いも広がります。
中国から渡ってきた菊は薬草として日本に伝わり、「重陽の節句(九月九日)」には菊花の宴が開かれてきました。
香り高く、表情豊かな美しさが愛され、皇室の紋章とまでなった格の高さや、おめでたさのある文様です。
どこにでも咲き、品種の多さからデザイン化しやすいモチーフとしても、着物にも多く描かれてきました。

 

着物の菊紋様

 

まんじゅう菊
糸菊
乱菊
菊唐草
光琳菊
菊水
菱菊
むじな菊
一重菊
菊の丸
横菊
菊尽くし

と、書ききれないほど。いかに日本人が「菊」を愛してきたかが伺えます。

長寿の象徴でもある菊文様の小紋ならば、一枚持っていれば吉祥文様の着物として、おめでたい場へお祝いの気持ちを表す着物として通年着られる一枚となります。

 

夏も冬もOK?「雪紋」

少し面白いのは「雪」モチーフ。
11月あたりから、雪を匂わせる文様として雪輪の柄に、雪のイメージで白や水色などを合わせるのもよし、下旬になれば早めに赤と緑をプラスしてクリスマスイメージとするも良し。

 

そして実は、真夏にも好んで使われる雪紋。
暑い夏に、涼しさを感じさせてくれる雪輪や、雪結晶を、さりげなく取り入れられてきました。面白いですね。

 

また、季節関係なく「雪輪取り」といって、雪輪の形の中に、さまざまな模様を描きこむ区切りとして使われています(他に、雲取りや霞取りなどもあります)。

 

着物の雪輪取り
↑ 雪輪取り

 

さらに、着物よりは帯、あるいは帯揚げや帯留め、髪飾りなどの小物にその季節のモチーフを取り入れて、さらに秋色のものをコーディネイトすることで、秋モード全開にしてみてはいかがでしょうか。

 

 

着物だから出来る季節感の楽しみ方はいろいろあります。
秋柄の着物がないからと諦めず、ご自分ならではのコーディネイト探し、トライしてみてくださいね。

 

菊柄の帯
↑ 菊の柄の名古屋帯で秋らしい装い

 

いせやでは、着物のコーディネイト相談も得意としています。
「この着物に合う帯を探して欲しい」
「これからの季節にぴったりの小物合わせを知りたい」
などなど、お悩み事、不安なこと、ちょっと聞いてみたい事などございましたら、
いつでもお出かけください。

 

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