2025年12月2日

着物でお出かけ!冬の着物防寒術 深谷本店

皆様こんにちは、いせや深谷本店の小林です。今回は着物でお出かけする際の防寒対策についてお話しさせていただきます。

はじめに:寒さを制して、冬の着物スタイルを格上げする

日本の伝統美を纏う着物姿は、季節を問わず魅力的ですが、特に寒さの厳しい真冬のお出かけでは、「防寒」が避けて通れないテーマとなります。大人の着物愛好家にとって、単に暖かければ良いわけではありません。着物の優雅なシルエットを崩さず、着膨れ感を極力抑えながら、いかに快適に寒さを乗り切るか、そのための「知恵と工夫」こそが重要になってきます。

着物は古来より伝わる「重ね着の妙」にあります。生地と生地の間に「動かない暖かい空気の層」を幾重にも作り出すこの伝統的な知恵を、現代の機能性素材と融合させることで、冬の着物スタイルは格段に快適になります。

この記事は、寒さを我慢せず、真冬ならではの凛とした着物美人を目指す大人の皆様へ、理論に基づいた防寒戦略と、実際に役立つ上質な必須アイテムを詳しくご紹介します。この冬、着物姿の美しさを損なうことなく、冬のお出かけを心ゆくまでお楽しみください。


I.  着物防寒を成功させるための3つの戦略的原則

着物での防寒は、闇雲に重ね着をするのではなく、理に適った3つの原則に従うことが成功への近道です。

1. 体幹と三首(首・手首・足首)を集中的に温める

 

最も熱を生み出す体の中心、体幹(胴体)をしっかりと温めることが、全身の血行を促進し、防寒の基礎となります。加えて、「三首」と呼ばれる首、手首、足首は、皮膚のすぐ下を太い血管が通っているため、ここが冷えると血液全体が冷やされ、すぐに全身の冷えにつながります。ショール、手袋、そして暖かい素材の足袋など、この三首を冷たい外気に晒さないよう、重点的にガードすることが大人の防寒戦略の要となります。

2. 薄手の素材を重ねて「動かない空気の層」を最大化する

 

着物における暖かさの秘密は、生地そのものの厚さではなく、「生地と生地の間に閉じ込められた空気の層」にあります。この空気こそが最高の断熱材となるのです。

着膨れを防ぎながら暖かさを得るには、厚手のアイテムを一枚着るのではなく、薄く上質な素材のアイテムを何枚も重ねることが鉄則です。これにより、幾重にも重なった空気の層が外気の冷気を遮断し、体の熱を逃しません。この重ね着のバランスこそが、着物の優美なシルエットを保つための鍵となります。

3. 汗を味方につける:吸湿発熱と汗冷え防止

 

冬の屋外は寒くても、暖房の効いた屋内や電車内では汗をかきます。この汗が冷えると、体温を急激に奪う「汗冷え」を引き起こし、かえって寒さを感じやすくなります。

そのため、肌に最も近い肌着には、汗を素早く吸い取り、体温で温められた湿気を利用して発熱する吸湿発熱素材などを賢く取り入れることが重要です。さらに、屋内と屋外の温度差に対応できるよう、コートやショールなど、簡単に脱ぎ着できる上質な防寒アイテムを準備し、こまめに体温調節を行うことが、快適な一日を過ごすためのプロのテクニックです。


II. 徹底攻略!冬の着物スタイルを支える必須防寒アイテム

ここでは、着物姿の品格を保ちながら暖かさを実現する具体的なアイテムとその選び方をご紹介します。

A. 肌着・襦袢(インナーウェア)

 

アイテム名 特徴と防寒効果 選び方のポイント
和装用機能性肌着 汗を吸って発熱する素材(吸湿発熱)を使用しており、薄手で着膨れしない。襟ぐりが深く、着物から見えない設計。 襟ぐりが深く、袖が七分丈など、着物や襦袢の袖・襟元からはみ出さないサイズを厳選する。絹や綿の薄手長袖Tシャツを代用するのも可。
和装用腹巻/保温インナー 体幹(お腹・腰)を温めることで、全身の血行を促進し冷えを防ぐ。特に女性の冷え対策に重要。 薄手で着付けの邪魔にならないウール混や薄手フリース素材のものを選ぶ。カイロを貼るためのポケットが付いた専用品も便利。
冬用長襦袢 絹やウール、または厚手のポリエステルなど、保温性が高い素材を使用。 袷(あわせ)仕立てや、裏地が温かい袷の素材を選ぶ。袖口から冷気が入るのを防ぐため、通し袖のものを推奨。
冬用裾よけ 腰から下を包む肌着。ネル(起毛綿)やガーゼなど、肌触りが良く保温性の高い素材で作られている。 冷えやすい足元に直接触れるため、普通のペチコートではなく、起毛素材を選ぶことで断熱効果を高める。

B. 外装アイテム(アウター)

 

アイテム名 特徴と防寒効果 選び方のポイント
道中着/道行コート 着物の上から羽織る専用コート。道中着は襟元が深く打ち合いになっており、防寒性が高い。道行コートは改まった印象でフォーマルにも対応。 カシミヤ、ウール、厚手シルクなど、上質な素材で、着物の裾が隠れるロング丈を選ぶ。撥水加工や防風性の高い素材だと更に安心。
大判ショール/ストール 首元、肩、背中、帯結びまですっぽり覆うことで、冷気の侵入を大幅に防ぐ、着脱自在な防寒具。 カシミヤ100%、上質ウール、アルパカなど、軽くて保温性が高い素材を選ぶ。柄や色は着物や帯と調和する上品なものを。
ファー・ベルベットティペット 首筋を重点的に温めるアイテム。ショールと併用することで、隙間からの冷気を完全にシャットアウトできる。 着物姿に合う上品なフォックスファーや、光沢が美しいベルベット素材を選ぶ。

C.  三首と足元の防寒アイテム

 

アイテム名 特徴と防寒効果 選び方のポイント
冬用足袋(ネル裏/別珍) 足袋の裏地がネル(起毛素材)別珍(ベロア)でできた保温性の高い足袋。断熱性が高く、足元からの冷えを防ぐ。 足のサイズに合ったものを。絹や薄手の五本指ソックスを中に履く「重ね履き」で保温性をさらに高めることも可能。
防寒草履 側面が合成皮革などで覆われ、内部にボアやファーが使われた草履。足の甲までカバーし、雪や冷たい風から足を守る。 防水加工が施されたものを選び、雪の日でも安心して歩けるようにする。底が滑りにくい工夫がされているかも重要。
和装用手袋/ロンググローブ 手首を覆い、血管が集中する手首の冷えを防ぐ。 着物の袖口から冷気が入らないよう、肘近くまで長さがあるロンググローブや、上質な革・カシミヤの手袋を選ぶ。指先が出るタイプは、細かな作業に便利。

III. 実践的な裏ワザと大人の着こなし術

着物の寒さ対策について

最後に、着物姿を美しく保ちながら、さらに暖かさを高めるための上級テクニックをご紹介します。

1. カイロを活用した「戦略的保温ポイント」

 

使い捨てカイロは、着物防寒の強力なサポーターです。効果を最大限に引き出すため、以下の戦略的なポイントに貼りましょう。

ポイント 効果
腰の仙骨部分 体を温めるツボが集まっており、全身の血行を促進します。
お腹(丹田) 体幹の深部から温め、特に冷えやすい腹部を効果的に守ります。
肩甲骨の間 首元に近いこの部分を温めることで、肩や背中の冷えを緩和します。

【上級者の注意点】

カイロは低温やけど防止のため、必ず肌着や襦袢の上から貼りましょう。また、帯と擦れると破れる可能性があるため、胴体部分に貼る際は、着物の内側、長襦袢の上に貼るのが安全です。

2. 着付けの技術で冷気を遮断する

着付けの際にも、冷気を防ぐ工夫を取り入れましょう。夏は首の後ろを大きく開ける(衣紋を抜く)のが美しいとされますが、冬は冷たい風が入らないよう、衣紋を控えめに抜くか、やや詰め気味に着付けることで、首筋からの冷えを防ぎます。襟合わせも深めにすることで、胸元からの冷気の侵入をブロックできます。

3. 品格を保つコーディネートの視点

着膨れせずにすっきりと見せるには、「薄いものを重ねる」原則を徹底することが肝要です。また、暖色系の着物や、紬やウールなどの温かみのある素材感を選ぶことで、視覚的にも暖かさを演出できます。ショールやコートの色柄を、着物や帯の色と調和させることで、防寒アイテムも立派なおしゃれの一部として成立させましょう。


結びに:冬の着物のお出かけを心から楽しむために

真冬の着物でお出かけは、季節の美しさを五感で感じる特別な体験です。ここでご紹介した防寒の「3原則」と「アイテム戦略」を取り入れることで、寒さという障壁を取り払い、着物姿の優雅さと快適な暖かさを両立させることができます。

上質なアイテムを選び、知恵をもって着こなす。これこそが、大人のための洗練された着物防寒術です。万全の準備で、初詣、美術館巡り、冬の街歩きなど、凛とした冬の着物ライフを存分にお楽しみください。

✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼

いせやグループは埼玉県深谷市・鴻巣市・東松山市・熊谷市・本庄市に店舗がある老舗呉服店です。

晴れの日の着物からカジュアル着物まで、呉服全般を取り扱っているほか、着物のお手入れのご相談なども承っております。

 

いせや呉服店では「前結びの着付け教室」を開催しております。ぜひお気軽にお越しくださいませ。

>>体験レッスンのお申し込みはこちら

 

 

体験レッスン
申し込み

振袖