2022年9月9日

着物の合わせは男女同じ!【 右前・左前】襟合わせの不思議

着物の合わせは男女同じ!【 右前・左前】襟合わせの不思議

こんにちは。
いせや呉服店スタッフのF です。
少しずつ日が短くなり、虫の音を楽しむ時間が長くなってきました。
皆様、きものライフいかがお過ごしでしょうか。

 

さて、今年は3年ぶりに夏祭りや花火大会なども開催されたところも多く、
久しぶりに浴衣姿を楽しむ方々をたくさんお見かけできた夏でした。

 

花火大会のあったある日、夕方の電車に乗り込むと目の前のシートに浴衣姿の若い男女がズラリ。
「わー、こんなにたくさんの若い方が浴衣でおしゃれしてくれているなんて、うれしい!」
と思ったのもつかの間。その7人のうち3人もの方の襟合わせが、左右逆ということに気づきました。
その場で着つけ直してあげられるわけでもなく、すぐに降りる駅が来てしまったため、何も伝えられることもできずにその場を後に。
もやもやとした思いでした。

 

ふだん着物を着る機会のない方でも「浴衣くらいは、がんばって自分で着たい!」
そんな奮闘の結果なのだろう、と思います。
中には、男の子が逆の合わせになっていたカップルも。
洋服同様、男女は違うものと思われていたのかもしれませんね。

 

ということで!
今回は、着物の合わせ方に迷わないように「左」「右」についてのお話しです。

 

 

「左前」「上前」「前合わせ」ってどういう意味?

着物の襟合わせ

まずは、ちょっとややこしい着物用語を攻略!

 

着物の部分名称や、着物の専門用語。
着付けの本や動画を見ていて??? となることありませんか。
理想の着物姿を実現するには、基本だけでも知っておきたいものですね。

 

今回のテーマ「着物の合わせ」関連の用語でも、
「何となくわかっているつもり」
というところがあるかもしれませんので、いくつかお伝えさせていただきます。

 

「前合わせ」

着物に袖を通し、前の右側と左側を重ね合わせるように着ること。
着付けの動作から生まれたような言葉ですね。

 

「襟(衿)合わせ」、「裾合わせ」

前を合わせる時、一般的な大人の着付けなら
「まず裾合わせをします」と、裾の着丈を決めつつ前幅・後ろ幅のバランスを決めることを指します。
「次に襟合わせをします」と、どのような角度で合わせて襟元を決めていくかという動作を指します。
「裾を合わせます」、「襟を合わせます」と言ったりもします。

着付けの裾合わせ

 

そして次が、少しややこしいかもしれません。

 

「上前」、「下前」

「上前」とは、前身頃の上側=外側になる身頃のこと。

つまり、左前身頃全体を指します。

 

 

「下前」とは、前身頃の下側=内側になる身頃のこと。

つまり、右前身頃全体を指します。

 

 

着付けのときは、
右側「下前」を身体に合わせる → その上に左側「上前」を重ね合わせる
という順になります。

 

「左前」、「右前」

「それじゃ『左前』、死人の着方になっちゃうよ」という注意、耳にしたことありませんか。

ということは……、

 

 

「右前」

まず右側を身体に合わせる → その上に左側を重ね合わせる
こちらが、一般的な着付け。

右側の前身頃が先に自分の身体に近い手前側にくる、「右手前」と考えるとわかりやすいです。

 

「左前」

まず左側を身体に合わせる → その上に右側を重ね合わせる
右前の逆で、亡くなった方の着付けです。

 

ということで、言葉の違い、使い分けはお分かりいただけましたでしょうか。

 

 

誰でもどのような着物でも、左側を上に着ます(=右前)

男性と女性の着物姿 襟合わせは同じ

いきなり、結論から言います。

着物の前合わせは、
とにかく左側を上(外側)にして着ます。

男女も、年齢、着物の区別もありません。
あらゆる着方において、左側が上と決まっています。
着物の前合わせは、老若男女関係なし! と覚えてくださいね。

 

ただし、唯一の例外が「死装束」です。
亡くなった方にお着せする真白な装束だけは、右側を上にします。

 

なんだ! ルールは単純。それだけだったの!?

 

そうなのです。シンプルで明確なルールしかありません。
ただ、これを間違うと「縁起が悪い」ということに通じ、
場合によっては、周りの方に不快な思いをさせてしまうこともありますから、
これだけは、しっかりと覚えておきましょう。

 

訪問着 左前

↑ 左側を上=外側に着るため、
訪問着や振袖などの模様付け(=絵羽模様のもの)は、左身頃をメインに模様が描かれています。

 

 

では、なぜこの唯一のルールが決まったのでしょうか?

 

 

はじまりは奈良時代「天下ノ百姓皆右衿ノコト」

「初令天下ノ百姓皆右衿(テンカノヒャクショウミナウキン)ノコト」

これは奈良時代、718年(養老2年)に藤原不比等が改修し、757年から施行された「衣服令(えぶくりょう)」条例の一文。

それまで、あまり決まりのなかった着物の合わせでしたが、唐(=中国。当時、右より左を尊んでいた)の影響もあり、百姓(庶民)は右前(=右衿。左側が上の現在と同様の合わせ)と定められました。
そして、貴人には左前が許されて、一目で特権階級の人とわかるように制定されたということです。

 

着物には、独特な左右感覚があります。
実際、右利きで日常の動作をするのには、いまの右前の着方が理にかなっていることが多くあります。

そんなことも感じながら、着物ライフから新たな感覚を発見して、楽しんでみてください。

 

最後に一つ、いせやからチェックポイントをお伝えします。

 

SNS上での「着物合わせの反転」に、要注意!

スマートフォンで自撮りした着物姿の写真。
鏡に映った姿の自撮りや、カメラアプリの設定が「反転」となっている場合での撮影などは、合わせが「左前」になってしまっていることがあります。
SNSにアップすると思わぬ指摘を受ける可能性もあります。
そこは是非、一度チェックしてからアップしてくださいね。

 

 

この他、着付けで気になることがございましたら、
いせやスタッフに、お気軽にお尋ねください。

また、帯の前結びを特徴としたいせやの「着付け教室」も人気です。
その方の雰囲気に合った、美しく見える衿合わせもアドバイスさせていただきますので、是非一度、見学や体験レッスンからでもいらしてください。

 

お問い合わせ、お申し込みはこちらへ
いせや呉服店着付け教室「前結びきもの学院 千の華」

 

✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼

いせやグループは埼玉県深谷市・鴻巣市・東松山市・熊谷市・上里町・本庄市・川越市に店舗がある老舗呉服店です。

晴れの日の着物からカジュアル着物まで、呉服全般を取り扱っているほか、着物のお手入れのご相談なども承っております。

 

いせや呉服店では「前結びの着付け教室」を開催しております。ぜひお気軽にお越しくださいませ。

>>体験レッスンのお申し込みはこちら

 

体験レッスン
申し込み

振袖