2022年9月19日
吉祥文様について
皆さまこんにちは。
いせや深谷本店の吉田と申します。
最近は時折暑い日もありますが、だんだんと涼しくなり過ごしやすい季節になってきましたね。
私はお休みの日によく散歩をするのですが、夕方になってくると蟋蟀の音が聞こえてきて、「もうすっかり秋だなあ」としみじみ感じています。
私は今年の4月に新入社員として入社し、約半年が経ちました。先輩方と一緒にお客様の接客に入る中で、私はまだまだ勉強不足だなと感じることが多くあります。これから少しずつ呉服の知識を身に着けて「私が学ぶ接客」から「お客様に知ってもらえる接客」を目指していきたいです。
さて今回は、着物の柄の「吉祥文様」について。
着物一枚一枚には様々な柄がございますが、特におめでたい、縁起の良いとされる模様のことを
「吉祥文様」と言います。特にフォーマルな着物にはおめでたい、お祝いの場でお召しになることですので、気になるお客様が多くいらっしゃいます。特に黒留袖レンタルの接客時に、「縁起の良い柄ってどのような柄ですか?」と質問されることが多くあります。今回は、おめでたい日に相応しいとされる「吉祥文様」の種類や意味についてお話していきます。
①松竹梅文様(しょうちくばいもんよう)
松竹梅文は、松、竹、梅の縁起の良い文様を組み合わせた吉祥文様です。松は冬の寒さに耐える常緑樹です。竹は成長が早く、まっすぐに伸び丈夫で折れることがありません。梅は他の花に先駆けて、初春の正月を祝う目出度い時期に咲く花として尊ばれています。松竹梅の文様が使われ始めたのは室町時代と言われています。婚礼の衣装や、風呂敷、婚礼布団、陶磁器、漆器や家具などにも用いられます。
②鴛鴦(おしどり)
鴛鴦(おしどり)の文様は、動物の吉祥文様です。中国から伝わった吉祥文様で、正倉院の宝物の中に鴛鴦の文様が見られます。
いつも雄雌いっしょにいることから、仲の良い夫婦を「おしどり夫婦」と言います。羽根の色が美しく鮮やかなことから、着物や帯などの文様として用いられています。
③扇文(おうぎもん)
扇文様は末広がりという形から、拡大、発展、繁栄を意味し、縁起の良い吉祥文様とされています。扇の形から、末広(すえひろ)とも呼ばれています。扇文様は高貴な優美さを表し、古くから貴族の衣装の文様として用いられました。
④鱗文(うろこもん)
鱗文様は、動物の吉祥文様です。文様の形が、魚や蛇の鱗(うろこ)に似ているところから鱗文(うろこもん)と呼ばれるようになりました。「入れ替わり文様」と言い、三角形を交互に入れ替えて文様を形づくっています。
厄除けや魔除けの力を持つ文様として尊ばれ吉祥文様のひとつです。そのため、昔から武家の陣羽織(じんばおり)や家紋としても使われています。
⑤鳳凰文(ほうおうもん)
鳳凰文は、中国で尊ばれた空想上の鳥です。麒麟(きりん)、龍(りゅう)、亀と合わせて四瑞と呼ばれています。鳳凰の形は、お祭りで担ぐ御神輿(おみこし)の屋根の上で大きく翼を広げた立派な鳳凰の姿を見ることができます。
鳳凰文は、延命長寿や夫婦円満の象徴として尊ばれている吉祥文様です。現代ではおめでたい文様として、黒留袖や帯の文様に用いられています。
⑥橘文様(たちばなもんよう)
橘文様は、植物の吉祥文様です。橘はみかんなどの木の総称です。常緑樹で永遠を意味し、葉や花に良い香りがします。橘の葉は冬でも元気よく生い茂ることから、長寿や子孫繁栄の願いを意味する吉祥文様として愛好されています。最近では、文化勲章のデザインに使用されています。
⑦鶴文様(つるもんよう)
鶴文様は、「鶴は千年、亀は万年」という諺にも言われるように、鶴は長寿の象徴として吉祥文様のひとつとなっています。鶴の文様としては、「折り鶴」、「千羽鶴」、「飛鶴」、「雲鶴」などの種類があり、家紋や紋綸子の地紋などに使われています。鶴の文様は、成人式、結婚式などに着る振袖やお宮参り、七五三などの着物の柄には欠かせない吉祥文様です。
⑧牡丹(ぼたん)
牡丹の文様は、花の吉祥文様です。牡丹は花の中でも豪華で派手な花です。百花の王とされ、幸福や高貴さを表しています。
牡丹の「丹」は不老不死の仙薬を意味することから長寿を願う柄として、昔から親しまれています。室町時代には、牡丹と唐草文様を合わせて、「牡丹唐草文様」が生まれました。
着物の柄としては、大変派手な文様ですので、若い女性向きと言えます。結婚式で使う色打掛や振袖、留袖の柄として用いられます。
⑨束ね熨斗文様(たばねのしもんよう)
束の熨斗とは、帯状に細長くした熨斗をいくつも束ねた模様となっています。そもそも熨斗とは「熨斗鮑(のしあわび)」と呼ばれ、薄く削いだ鮑を伸ばし、乾燥したものを贈り物に添えたもの。
華やかで高級感あふれる熨斗をいくつも束ねた様子は、祝福や絆を意味します。また、熨斗の長さは長寿を表し、非常にめでたい模様です。
⑩雪輪文様(ゆきわもんよう)
雪輪・雪華文様は、雪の結晶がデザインされた模様です。豪雪の年は、豊作となることから雪は「五穀の精」と言われていました。そのことから、雪輪文様や雪華文様は豊作の象徴となっています。
いかがでしたでしょうか。
吉祥文様は、ここでご紹介したものは代表的なもので、それ以外にもたくさんございます。吉祥文様は、招福開運、夫婦和合、子孫繁栄、延命長寿、などの願いが込められていますので、結婚式や成人式、お祝いの席に着る着物の文様にふさわしい文様ですね。
ご自分で着物を購入される場合や貸衣装で借りる場合でも、上記にご紹介した吉祥文様の基礎知識を参考にして、自分に合った柄を選んでみてください。きっと良い思い出になるはずです。
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