2022年11月13日

長襦袢のおしゃれ 着る意味から仕立てや素材の種類・ルールまで

長襦袢

こんにちは。

いせやスタッフのF です。

日々錦の彩りを楽しませてくれる街路樹。

ガサガサと音を立てて落ち葉の上を歩くのが密かな楽しみだったりします。

皆様、着物ライフいかがお過ごしでしょうか。

 

先日、H様(30代前半)が長襦袢のことで相談したいことがあるとご来店くださいました。

その際、叔母様から譲られたという長襦袢をお持ち込みに。たとう紙を開けてみると、菊の地紋の入った真っ赤な紅絹(もみ)の長襦袢でした。

「こんなに真っ赤な長襦袢、私の年齢でも着られますか? いつ何に合わせて着たら良いですか?」と迷われているそう。

 

ちなみに、着物を着始めて2年目のH様は普段、どんな着物にも無難に合わせやすい桜色のぼかしの長襦袢を愛用されているとのこと。確かにとても重宝なタイプです。

オーソドックスな長襦袢

 

ということで、今回は長襦袢のお話をさせていただきます。

 

 

着物姿の土台をかたち作る、長襦袢の役割

着物を着るときに必要な長襦袢。当たり前のように着ていますが、肌襦袢、裾除けといった下着と着物の間に着る一枚には、どのような役割があるのでしょう。

 

①着物を汚れから守る

当たり前ですが、着物を着れば汗をかいたり皮脂汚れが付いたりして、着物が汚れます。特に首まわり、袖口まわり、足元。汗をかく脇や帯位置辺り。長襦袢を着ることで、それらの汚れが着物に直接付きにくくなっています。首の汚れが着物に付くのを防ぐ効果もある半衿も、長襦袢に縫い付けられます。

 

②温度、湿度調節

昔は袷(あわ)せ仕立てが無く、単衣(ひとえ)を重ねることで、体温を調節していたそうです。

長襦袢を着るのもその名残。季節や着物に合わせて素材、仕立てを変えて着ることで、体温調節に一役買っています。
気候変動の激しさで衣更が暦に合わせにくいときは、着物はなるべくルール通りにし、身体に近い長襦袢の素材、仕立てを調節すると便利です。

 

③着姿の土台を決める

着物姿のスタイルを決めるのは、下着、補正、長襦袢までといわれます。
そこまでがしっかりと決まっていれば、あとは出来上がったボディに沿って、着物、帯とのせていくだけ。長襦袢を着終えたところで、美しい着姿への勝負は半分以上終えられているかもしれません。
ポイントは、サイズの合った襦袢を、空気を抜いてスッキリと着付けることでしょうか。

 

④振りや袂(たもと)からのチラ見えによるおしゃれ効果

着物姿で長襦袢自体が見えるのは基本的に、袖口と振りだけ(襟元は、半襟を縫い付けてしまうため外からは見えません)。
それでも、ふとした手のしぐさによってチラリと見える長襦袢は、見た人の心に印象深く残ることがあります。

 

訪問着

 

 

意外と種類の多い、長襦袢の形・仕立て・素材

見える箇所が少ない分、工夫次第でより快適になったり、好みの着姿に近づけたり出来ます。
特に襟元の印象に大きく関わってきます。自分らしい着方のために、いろいろと試してみてください。

 

形の種類

一部式 通常の仕立て。
二部式 上下に分かれているタイプ。幅広い身長差に対応できるので、好まれる方も。
ランジェリー 身頃と襟に分かれているタイプ。
嘘つき 身頃は綿晒し素材などで、袖と裾よけ部分だけ見せたい生地でつくります。「替え袖」を作っておけば、着物に合わせて取り替えて、気軽に楽しめます。

 

仕立ての種類

袷せ 裏付の袷せ仕立て。
単衣 裏のない単衣仕立て。
袖無双 身頃が単衣で袖が袷せ仕立て。近年は袷せよりこちらが増えています。
関東仕立て 「通し襟仕立て」で、襟がそのまま裾まで通り、衽の役割も果たしています。
関西仕立て 「別襟仕立て」で、着物と同じように前身頃に襟と衽のパーツが縫われています。

*現在は、身頃をしっかり包みやすい関西仕立てが一般的です。

 

襟の種類

広襟 半分に折って着るため、ふわりとした印象の襟元をつくりやすいタイプ。
バチ襟 背中心から襟先へだんだんと広くなっていくタイプで、すっきりした印象に。
棒襟 半分に折られた幅の仕立てで、子供や男物はほぼ棒襟です。

 

素材の種類

軽くて肌触り、滑りも良いので動きやすい。洗濯には少し気を使います。
夏向き。多少シワがつきやすいですが、さらりとした肌離れの良さは格別。
綿 着物が綿などのカジュアル向き。はじめは縮みやすいので要注意。
化学繊維
各種
機能性に優れたポリエステルなどさまざまな種類があります。

*素材、仕立てにより、自宅で洗えるものもあります。

 

長襦袢  

 

 

決まったルールがある? どんな色柄を選べばいいの?

 

長襦袢の色柄にも、一部にフォーマルルールがありますが、それ以外は融通のきくことが多いもの。着物コーディネイトに秘かにメッセージを込めたりと、楽しんでみてはいかがでしょう。

 

フォーマルの決まりごと

■黒留袖・色留袖・紋服・喪服

式典などで着られる上記の着物については、白の無地と決まっていますので、これだけは守りましょう。

 

フォーマル着物の場合の長襦袢は白

長襦袢の「地紋」はOKですが、吉祥柄は弔事には使えません。流水、紗綾形、網代文などは、慶弔両方に使える文様です。

 

■振袖

ミスの第一礼装振袖は華やかに装うもの。長襦袢には、ボカシが多く、他に無地に絞りのものなどもおすすめです。

 

振袖の長襦袢
▲振袖の長襦袢

 

セミフォーマルはどうする?

■色無地・江戸小紋

色無地や江戸小紋など紋付のセミフォーマルとして着る場合は、長襦袢はあまり色柄の強くないものを選ぶのがベター。
無地かボカシなどは礼装度が高く、おすすめです。もちろん地紋はOKです。

 

カジュアルは、好みを思い切り反映させて

「長襦袢好き」という方は、「可愛い小紋や好みの色柄の襦袢生地を見つけると、つい買ってしまいます。この襦袢を着るには、どんな着物を合わせようかと考えるくらいです」と話されるほど。そんな楽しみ方も、とても素敵ですね。

カジュアルは、基本的にルールはありません。ご自身のセンスで新しい発見をしてみてください。例えば、こんな感じで遊んでみませんか。

 

■シックな大島紬 + 紅絹の襦袢

H様がお持ちくださったような真っ赤な色の効果を生かし、大人の着こなしに。

 

■菊の帯 + 菊小紋柄の襦袢

菊尽くしで、秋を満喫。菊らしい辛子色が振りから見えたら、ドキッとします。

 

■クリスマス柄の小紋 + 雪輪地紋の襦袢

全身で冬を楽しむコーディネートに。金銀使いの刺繍半襟なら最高ですね。

 

■縞紬 + 猫モチーフの襦袢

大好きな猫モチーフも、着物で着るにはまだ勇気がいるけど、チラ見えの長襦袢なら思い切り楽しめそうです。

 

■江戸小紋 + 帯の色と合わせた襦袢

江戸小紋と長襦袢 パーティーシーン

お食事会で江戸小紋を少しカジュアルに着たいとき、さりげなく帯と襦袢の色を合わせて上品にまとめるのもすてきです。

 

 

いせやでは、長襦袢も豊富にお取り扱いしております。

もちろん、お仕立ても可能。体型に合わせたサイズ、仕立て方、「衣紋抜き」などのご相談も承ります。楽しい半襟選びまで、お気軽にお声掛けください。 

 

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晴れの日の着物からカジュアル着物まで、呉服全般を取り扱っているほか、着物のお手入れのご相談なども承っております。

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