2025年7月12日
浴衣は家で洗濯できる?初心者さん向け、失敗しないお手入れ方法!

日本の夏を彩る美しい浴衣。お祭りや花火大会、盆踊りなど、夏の特別なシーンには欠かせないアイテムですよね。でも、「浴衣って、着物と同じように特別な手入れが必要なの?」「家で洗濯できるのかな?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。
特に着物初心者さんにとっては、浴衣のお手入れはハードルが高いと感じるかもしれません。しかし、ご安心ください!浴衣の素材によっては、ご自宅で手軽に洗濯できるものがたくさんあります。
この記事では、着物初心者さんに向けて、浴衣の素材別の洗濯可否から、自宅でできる浴衣の洗い方、そして来年も気持ちよく着るための保管方法まで、失敗しない浴衣のお手入れ方法を詳しくご紹介します。これを読めば、今年の夏も来年の夏も、お気に入りの浴衣を美しく保ちながら、心ゆくまで楽しめますよ!

浴衣、家で洗っていいの?素材でわかる洗濯の可否
まず最初に、お手持ちの浴衣が自宅で洗濯できるかどうかを確認しましょう。浴衣の素材によって、洗濯の可否や洗い方が大きく異なります。
1. 綿(コットン)素材の浴衣
浴衣の素材として最も一般的で、自宅での洗濯に最も適しているのが綿素材の浴衣です。吸湿性・通気性に優れており、丈夫で扱いやすいのが特徴です。特に、以下のような綿素材は自宅でのお洗濯が可能です。
- 綿絽(めんろ): 織り方が絽目になっているため、透け感があり涼しいのが特徴です。
- 綿紅梅(めんこうばい): 格子状に太い糸が織り込まれており、肌に触れる面積が少なく、さらりとした着心地です。
- 綿麻(めんあさ): 綿と麻の混紡素材です。麻が加わることで、通気性がさらに向上し、シャリ感のある涼やかな着心地になります。
多くのプレタ浴衣(仕立て上がりの浴衣)は綿素材が主流なので、ほとんどの浴衣はご自宅で洗えると考えて良いでしょう。
2. ポリエステル素材の浴衣
最近では、速乾性がありシワになりにくいポリエステル素材の浴衣も増えています。こちらも自宅での洗濯が非常に簡単で、お手入れに手間がかかりません。特に、雨の日や汗をたくさんかく場面で活躍します。
3. 麻(リネン)素材の浴衣
麻100%の浴衣は、非常に通気性が高く、独特のシャリ感が魅力です。自宅での洗濯も可能ですが、綿素材に比べてシワになりやすく、縮みやすい特性があるため、洗濯表示をよく確認し、慎重に行う必要があります。
4. 絹(シルク)素材の浴衣(着物に近いもの)
絹(シルク)素材の浴衣は、自宅での洗濯は避けるべきです。絹はデリケートな素材で、水に弱く、縮んだり光沢が失われたりする可能性があります。正絹の浴衣や、アンティークの浴衣など、高価なものや特別な浴衣は、必ず専門のクリーニング店に相談しましょう。

確認すべきは「洗濯表示」!
ご自宅で洗濯できるかどうかを判断する最も確実な方法は、浴衣についている「洗濯表示」を確認することです。
- 桶のマークに「×」がないか?: 桶のマークに「×」がついている場合は、家庭での洗濯はできません。
- 手洗いマーク(桶に手が入っているマーク)があるか?: このマークがあれば、手洗い可能です。
- 洗濯機マークがあるか?: このマークがあれば、洗濯機での洗濯が可能です(通常は弱水流や手洗いコース推奨)。
もし洗濯表示が見当たらない、または判断に迷う場合は、無理に自宅で洗濯せず、クリーニング店に相談することをおすすめします。
浴衣を家で洗う準備をしよう!洗濯前のチェックポイント
自宅で浴衣を洗濯できることが確認できたら、いよいよ洗濯の準備に入りましょう。失敗しないためには、洗濯前の準備がとても重要です。
1. 汚れのチェックと前処理
浴衣全体を広げて、どこに汚れがあるかを確認します。特に汚れやすい部分は以下の通りです。
- 襟元、袖口: 汗や皮脂、ファンデーションの汚れがつきやすい部分です。
- 裾: 泥はねやホコリで汚れやすい部分です。
- 脇: 汗染みができやすい部分です。
目立つ汚れがある場合は、洗濯前に部分的な前処理をしておくと、よりきれいに洗い上がります。
- 汗染みや皮脂汚れ: おしゃれ着用の中性洗剤を少量、汚れに直接つけて軽く揉み洗いするか、柔らかいブラシで優しく叩き込みます。
- 食べこぼし: 食べこぼしは乾くと落ちにくくなるので、できるだけ早く処理しましょう。水で濡らした布で軽く叩いて汚れを浮かせ、中性洗剤を少量つけて優しく揉み洗いします。
- 泥汚れ: 泥汚れは、乾いてからブラシで叩き落とすのが基本です。濡らすと繊維の奥に入り込んでしまうことがあるので注意しましょう。
2. 色落ちチェック
特に初めて洗う浴衣や、濃い色の浴衣の場合は、色落ちがないか事前にチェックすることをおすすめします。
浴衣の目立たない場所(裾の裏側など)に、おしゃれ着用洗剤を溶かした水を含ませた白い布を軽く押し当ててみてください。白い布に色が移らなければ、色落ちの心配は少ないでしょう。もし色が移る場合は、単独で手洗いするか、プロのクリーニングに任せる方が安心です。
3. 畳み方と洗濯ネットの活用
浴衣はデリケートな衣類なので、そのまま洗濯機に入れると型崩れやシワの原因になります。必ず洗濯ネットに入れて洗いましょう。
浴衣を洗濯ネットに入れる際は、「屏風畳み(びょうぶだたみ)」にするのがおすすめです。屏風畳みは、浴衣を縦半分に折り、さらに蛇腹状に畳んでいく方法です。こうすることで、洗濯中の摩擦を減らし、型崩れやシワを防ぐことができます。
- 浴衣を広げ、左右を合わせて縦半分に折ります。
- 襟の部分から裾に向かって、約30cm幅で屏風のように折り畳んでいきます。
- 綺麗に畳んだ浴衣を、浴衣のサイズに合った大きめの洗濯ネットに入れます。
自宅でできる浴衣の洗い方:手洗いと洗濯機、それぞれのコツ
準備が整ったら、いよいよ洗濯です。浴衣の洗い方には、「手洗い」と「洗濯機洗い」の2つの方法があります。どちらの方法を選ぶかは、浴衣の素材や汚れ具合、そしてご自身の好みによって決めましょう。
1. 浴衣の手洗い方法(推奨)
手洗いは、浴衣への負担が最も少なく、色落ちや型崩れの心配が少ないため、特におすすめの洗い方です。少し手間はかかりますが、お気に入りの浴衣を長くきれいに保ちたいなら、ぜひ挑戦してみてください。
準備するもの:
- 浴槽または大きめの桶
- おしゃれ着用中性洗剤
- きれいなタオル
手洗いの手順:
- ぬるま湯(30℃以下)を張る: 浴槽や大きめの桶に、浴衣が浸る程度のぬるま湯(30℃以下)を張ります。熱すぎるお湯は縮みや色落ちの原因になるため、必ずぬるま湯を使用しましょう。
- 洗剤を溶かす: おしゃれ着用中性洗剤を規定量溶かし入れ、よくかき混ぜて洗剤液を作ります。
- 浴衣を優しく浸す: 屏風畳みにした浴衣を、ゆっくりと洗剤液に浸します。この時、無理に押し込んだり、急に沈めたりしないように注意しましょう。
- 押し洗いをする: 浴衣全体が洗剤液に浸かったら、上から手のひらで優しく押したり浮かせたりを繰り返す「押し洗い」をします。ゴシゴシ擦ったり、揉み込んだりするのは避け、浴衣全体に洗剤液を行き渡らせるイメージで行いましょう。汚れがひどい部分は、部分的に優しく揉み洗いしても構いません。5分~10分程度を目安に行います。
- 水を抜く: 汚れが浮き出てきたら、洗剤液を抜きます。
- すすぎ(2~3回): 新しいぬるま湯を張り、再び押し洗いをして洗剤を洗い流します。泡が出なくなるまで、2~3回繰り返しましょう。すすぎの際も、ゴシゴシ擦らず優しく行うことが大切です。
- 脱水(短時間): 浴衣を洗濯ネットに入れたまま、洗濯機で30秒〜1分程度の短時間脱水をかけます。長く脱水にかけるとシワの原因になるため、水が滴り落ちない程度でOKです。手で絞るのは型崩れの原因になるので避けましょう。
2. 浴衣の洗濯機洗い方法
「手洗いは大変…」という方や、綿やポリエステルの丈夫な素材の浴衣なら、洗濯機洗いも可能です。ただし、必ず「手洗いコース」「ドライコース」「おしゃれ着コース」などの弱水流コースを選びましょう。
準備するもの:
- おしゃれ着用中性洗剤
- 大きめの洗濯ネット
洗濯機洗いの手順:
- 洗濯ネットに入れる: 事前に屏風畳みにした浴衣を、大きめの洗濯ネットにぴったりと収まるように入れます。ネットの中で浴衣が動きすぎると、シワや型崩れの原因になります。
- おしゃれ着用洗剤を入れる: 洗濯機に規定量のおしゃれ着用中性洗剤を入れます。
- 弱水流コースを選ぶ: 洗濯機の「手洗いコース」「ドライコース」「おしゃれ着コース」「ソフトコース」など、最も水流の弱いコースを選んで洗濯を開始します。
- 短時間脱水: 洗濯が終了したら、すぐに取り出し、30秒〜1分程度の短時間脱水をかけます。

浴衣の干し方:シワなくきれいに仕上げるコツ
洗濯が終わったら、次は干す作業です。干し方一つで、浴衣の仕上がりが大きく変わってきます。シワなくきれいに仕上げるためのポイントを押さえましょう。
1. 干す前の準備:シワを伸ばす
脱水が終わったら、すぐに浴衣を取り出し、シワを伸ばします。
- 両袖を持ち、パンパンと振ってシワを伸ばします。
- 縫い目を優しく引っ張り、形を整えます。特に襟元や裾は、丁寧にシワを伸ばしましょう。
- 軽くたたくようにして、生地のたるみを取り除きます。
2. 陰干しが基本
浴衣は直射日光に当てると、色褪せや生地の傷みの原因になることがあります。風通しの良い日陰で「陰干し」するのが基本です。
3. 和装ハンガーを活用する
浴衣を干す際は、「和装ハンガー(着物ハンガー)」を使用するのが最もおすすめです。和装ハンガーは、袖を通して広げられるため、浴衣全体に風が通りやすく、シワなくきれいに乾かすことができます。
和装ハンガーがない場合は、物干し竿に袖を通してM字型に干したり、二本のハンガーを使って袖を広げて干したりする方法もあります。その際も、生地が重ならないように、風が当たる面積を最大にするように工夫しましょう。
4. 早く乾かすためのポイント
- 風通しの良い場所で干す: 風通しが良い場所ほど早く乾きます。
- 厚手のハンガーを使う: 肩の部分がしっかりしている厚手のハンガーを使うと、型崩れを防ぎながら乾かせます。
- 扇風機や除湿機を活用する: 室内干しの場合は、扇風機や除湿機を併用すると、乾燥時間を短縮できます。
5. アイロンがけのポイント
洗濯表示に「アイロン可」のマークがある場合は、アイロンがけをすることで、より美しい仕上がりになります。
- 半乾きの状態でかける: 完全に乾いてからだとシワが伸びにくいので、少し湿り気が残っている半乾きの状態でかけるのがおすすめです。
- あて布をする: 生地に直接アイロンを当てるとテカリの原因になることがあるので、必ずあて布をしましょう。
- 低温~中温で: アイロンの温度は、素材に合わせて「低温〜中温」に設定します。
- 裏側からかける: 裏側からアイロンをかけると、生地の表面を傷めにくく、テカリを防ぐことができます。
- 縫い目に沿ってかける: 縫い目に沿って丁寧にアイロンをかけ、シワを伸ばしていきます。特に、襟や袖口、裾は念入りにかけましょう。

浴衣の保管方法:来年も気持ちよく着るために
来年も気持ちよく浴衣を着るためには、正しい方法で保管することが大切です。
1. 完全に乾いているか確認する
浴衣をしまう前に、完全に乾いていることを確認しましょう。湿気が残ったまま保管すると、カビや虫食いの原因になります。
2. 綺麗に畳む
収納する際は、シワを防ぐために丁寧に畳みます。和装箪笥や衣装ケースに入れる場合は、浴衣を広げてそのまま収納できる「たとう紙(文庫紙)」に入れるのが理想的です。たとう紙は通気性が良く、湿気や虫から浴衣を守ってくれます。
たとう紙がない場合は、屏風畳みにしてから、不織布の収納ケースや、湿気の少ない場所に保管しましょう。
3. 防虫剤・除湿剤の活用
浴衣の保管には、防虫剤と除湿剤を必ず使用しましょう。
- 防虫剤: 衣類害虫から浴衣を守ります。和紙に包まれたタイプや、引き出しに入れるシートタイプなど、様々な種類があります。直接浴衣に触れないように、たとう紙の外側や衣装ケースの隅に置くのがおすすめです。
- 除湿剤: 湿気はカビの原因になります。衣装ケースや引き出しに入れるタイプの除湿剤を併用し、湿気対策をしっかりと行いましょう。
4. 定期的に風を通す
浴衣を長期保管する際は、年に数回(梅雨明けや秋口など)は取り出して陰干しし、風を通しましょう。これを「虫干し」と言います。虫干しをすることで、湿気を飛ばし、カビや虫食いを防ぐことができます。

浴衣のお手入れQ&A:こんな時どうする?
ここからは、浴衣のお手入れでよくある疑問にお答えします。
Q1. 汗をかいた浴衣、すぐ洗った方がいい?
A. はい、できるだけ早く洗いましょう。汗は時間の経過とともに黄ばみやシミの原因になります。着用後はなるべく早く洗濯するか、クリーニングに出すことをおすすめします。すぐに洗えない場合は、風通しの良い場所に広げて陰干しし、汗を飛ばしておきましょう。
Q2. 部分的な汚れはどうすればいい?
A. まずは濡らしたタオルで軽く叩き、それでも落ちなければ中性洗剤で部分洗いしましょう。食べこぼしなど、特定の汚れがある場合は、上記「汚れのチェックと前処理」の項目を参考に、適切な方法で対処してください。強く擦ると生地を傷める可能性があるので、優しく行うのがポイントです。
Q3. シワがひどい場合は?
A. アイロンをかけましょう。上記「アイロンがけのポイント」を参考に、あて布をして低温〜中温で裏側から丁寧にアイロンをかけます。スチーム機能を使うと、よりシワが伸びやすくなります。
Q4. クリーニングに出すタイミングは?
A. 「自宅での洗濯が不安な場合」や「絹素材の浴衣」「高価な浴衣」「汗や汚れがひどい場合」は、迷わずクリーニング店に依頼しましょう。特に、汗をたっぷりかいた浴衣は、プロによる「汗抜き加工」をしてもらうと、来年も気持ちよく着られます。
まとめ:浴衣のお手入れは意外と簡単!
「浴衣はデリケートだからお手入れが大変…」と思われがちですが、いかがでしたでしょうか?浴衣の素材を見極め、適切な方法で洗って保管すれば、ご自宅でも十分に美しい状態を保つことができます。
覚えておきたいポイントは以下の通りです。
- 素材を確認: 綿やポリエステルは自宅で洗濯可能。絹は専門業者へ。
- 洗濯表示をチェック: これが一番重要!
- 洗濯ネットと中性洗剤: 必須アイテム。
- 手洗いか弱水流コース: 浴衣に優しい洗い方を選ぶ。
- 短時間脱水と陰干し: シワと色褪せを防ぐ。
- 正しい保管: カビと虫食いから守る。
今年の夏は、ご自身で浴衣をお手入れして、清潔で気持ちの良い浴衣を楽しみませんか?正しいお手入れ方法を身につければ、お気に入りの浴衣を長く大切に着続けることができますよ。
さあ、あなたもこの夏、自分で洗った浴衣で、日本の夏を満喫しましょう!
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いせやグループは埼玉県深谷市・鴻巣市・東松山市・熊谷市・本庄市に店舗がある老舗呉服店です。
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