2025年12月7日
冬の茶会・観劇で輝く着物マナーと立ち居振る舞い術 深谷本店

皆様こんにちは、いせや深谷本店の小林です。
今回は冬のお茶会や観劇で役に立つ立ち振る舞いについてお話させて頂きます。
冬の澄んだ空気の中で纏う着物は、その暖かさだけでなく、風情ある景色に美しく映えるものです。特に茶会や観劇といった格式を重んじる場では、着物の「格」に加え、「立ち居振る舞い」が問われます。
コートやショールなどの防寒具が増える冬場は、着慣れた方でも所作に迷いがちです。この記事では、冬の着物で外出する際に必須となる防寒対策の作法から、茶室や座席での細やかなマナーまで、あなたの冬の着物姿をさらに優雅に格上げするための秘訣を徹底解説します。
序章:冬の着物とTPOの基本

冬の着物選びは、「暖かさ」と「場の格(TPO)」を両立させることが鍵です。
1. 着物の「格」と冬の素材選び
| シーン | 着物の格(主な種類) | おすすめの素材・防寒着 |
| 茶会 | 略礼装~セミフォーマル(色無地、江戸小紋、付け下げ) | 袷仕立て、胴抜き仕立て。羽織、控えめな色柄の道行コート。 |
| 観劇 | カジュアル~おしゃれ着(小紋、紬) | 紬、ウール。カシミアやウールの大判ショール、道中着。 |
【ワンポイント】 茶会では、季節感のある「雪輪(ゆきわ)」や「南天(なんてん)」などの柄を控えめに帯や小物の色で表現すると、粋でおしゃれです。
2. 見落としがちな冬の「足元」準備
寒い季節の外出で最も重要なのは足元対策です。
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ネル裏足袋: 足裏が起毛素材(ネル)になっている足袋は、抜群の保温性。冬の必須アイテムです。
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爪皮(つまかわ)/足袋カバー: 泥はねや雨雪から足袋を守ります。建物の入口でサッと外せるよう、持ち歩きましょう。
Part 1:冬の外出着物マナー【防寒着の所作】

冬は防寒着をいかに美しく扱うかが、エレガントな印象を左右します。
1. コート・ショールを脱ぐ「タイミング」
洋服と同じく、着物のコート(道行・道中着)も基本的に建物の玄関(屋内)に入る前に脱ぎます。
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屋外: 玄関や門の前で立ち止まり、静かにコートを脱ぎます。
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脱ぎ方: 脱いだコートは、裏地を外側にしてたたむのが基本。裏地が外に出ることで、ほこりや汚れを外に出さないという気遣いが示されます。
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扱い: 室内では、専用のクローク、または指示された控えの間に持ち込み、風呂敷に包んで畳んで置いておくのが最も丁寧です。
2. 羽織の扱い方(茶会と観劇の違い)
| アイテム | 茶会でのマナー | 観劇でのマナー |
| 羽織 | 控えの間(寄付)で脱ぐ。茶室(本席)は亭主に対する敬意として脱ぐのが正式なマナーです。 | 基本的に着用したままでOK。ただし、座席で背もたれに当たる場合は脱いだ方が楽です。 |
| ショール | 控えの間で脱ぎ、荷物にまとめる。膝掛けとして使用する場合は、周囲に確認を。 | 座席では膝掛けとして使用できる場合が多いですが、首に巻いたままの観劇はマナー違反です。 |
3. 移動中の優雅な「裾さばき」
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階段・エスカレーター: 裾を踏まないよう、上前(うわまえ:外側の布)の脇線あたりを右手で軽く持ち上げます。体をやや斜めにして昇降すると、袖を傷めにくく、後ろの人への配慮にもなります。
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雨雪の日: 傘を差し、着物の裾が濡れないように心持ち高めに持ち上げます。濡れた着物をそのまま放置しないよう、すぐに乾いた布で水気を拭き取る準備も必要です。
Part 2:茶会に着物で参列する【細部のマナー】

茶会は「静」の所作が求められる場であり、亭主や他の客への細やかな配慮が重要となります。
1. 玄関から寄付(控えの間)までの準備
1-1. 足袋を履き替える
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これが茶会における最大のTPOの一つです。道中で履いてきた足袋ではなく、汚れていない新しい足袋に履き替えます。
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履き替えの際、人前で肌を見せないよう、膝の上から風呂敷をかけるなどして静かに行います。
1-2. 荷物のまとめ方
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コート、羽織、ショール、ハンドバッグなど、席入りに不要なものはすべて、風呂敷に包んで一箇所にまとめます。
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茶会に必要な懐紙入れ、扇子、数寄屋袋(すきやぶくろ)だけを身につけます。
2. 茶室での立ち居振る舞い
2-1. 席入りの優雅な所作
茶室の入口は狭く設計されていることが多いです。着物の袂(たもと:袖の袋状の部分)の扱いに特に注意を払います。
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にじり口の場合: 低い位置を通る際、両方の袖(袂)を両手で揃えて持ち上げ、床や畳に触れないようにしてから入ります。背中は丸めず、膝と腰を使い、静かに身をかがめます。
2-2. 正座と立つ時の「着崩れ防止策」
畳の上で、スムーズに、かつ着物を傷めずに正座や起立を行う技術です。
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座り方: 帯がつぶれないよう、正座は浅めに腰掛けます。座布団があれば、その手前の畳の上に正座します。
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両膝を畳につけ、つま先を立てます。
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手を前に置き、帯を潰さないよう上半身を前に倒し、ゆっくりとかかとをおろします。
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立ち方: 畳の上でバタバタと音を立てないよう、膝と腰を使い、静かに立ち上がります。
2-3. 袖(袂)と帯の扱い
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袖: 袖は床にだらりと垂らさず、膝の上で重ねて畳んでおきます。
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帯: 座っている最中、帯が他の人の迷惑にならないか、常に意識的に確認しましょう。
Part 3:観劇に着物で出かける【座席のマナー】

観劇はエンターテイメントを楽しむ場ですが、座席では特に「周囲への配慮」が重要となります。
1. 観劇に適した着物の格と着付け
1-1. 長時間座るための着付けのコツ
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観劇は休憩を挟んでも数時間座りっぱなしになります。帯をきつく締めすぎると苦しくなるため、やや緩めの着付けを心がけましょう。
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着崩れしても直しにくいので、着付けの時に胸元をしっかりと固定し、衿元が崩れないようにします。
1-2. 帯結びの選び方
背もたれに寄りかかることを想定し、ボリュームが出ない帯結びを選ぶのが鉄則です。
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最適: お太鼓結び(最も潰れにくい)
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注意: 華やかな角出しや変わり結びは、背もたれから離れて浅く座る必要があり、疲れやすいだけでなく、後ろの席の人に圧迫感を与える可能性もあります。
2. 座席での立ち居振る舞いと配慮
2-1. 席へのスムーズな移動
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着物で通路を通る際は、できるだけ横向きで(蟹股にならないよう注意)、隣に座っている人の膝や手荷物に袖を触れさせないよう細心の注意を払います。
2-2. 観劇中の「袖」の置き場所
これが観劇マナーの重要ポイントです。
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正しい置き方: 長い袂は、座席や床に垂らさず、膝の上にきちんと畳んで重ねて置きます。
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避けるべきこと: 隣の人の座席にはみ出す、肘掛けからだらりと垂らす、座席に挟む、など。
2-3. 拍手と背もたれの作法
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拍手: 拍手をする際に袖が大きくバタつくと、周りの視界を遮ることがあります。片手で袂を軽く押さえながら、手のひらの位置を低めにして拍手するとスマートです。
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座り方: 背もたれに帯が直接当たると、帯が潰れる原因になります。背もたれと帯の間にわずかな空間を作るように浅く座ると、長時間でも快適に過ごせます。
3. 後ろの席への「配慮マナー」
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ヘアスタイル: 後ろの人の視界を遮るような高い位置でのまとめ髪や、大きな髪飾り(かんざし)は厳禁です。髪は低めに、襟足に沿ってコンパクトにまとめましょう。
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匂い: 強すぎる香水や、飲食(休憩中も含む)で匂いが残らないよう配慮します。
終章:スマートな冬の着物美人になるために
冬の茶会や観劇は、着物を格調高く、そしてエレガントに見せる最高の舞台です。
ここでご紹介したマナーは、「周囲への心配り」と「着物を大切に扱う気持ち」に集約されます。
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寒いからこそ、防寒具を脱いだ時の清潔感と所作の美しさが際立ちます。
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座っている時間が長いからこそ、周囲への配慮と着崩れを防ぐ工夫が求められます。
これらのマナーを心得て、あなたもこの冬、着物で優雅に芸術や文化のひとときを楽しんでください。
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