2022年2月28日

【礼装着物】黒留袖・色留袖はどんな着物? 

あっという間に2月も終わりに近づきました。
3月になると、卒業式シーズンで着物姿や袴姿の方をたくさん見かけます。
最近は幼稚園や小学校の卒園式・卒業式にも袴を着るお子様が増えて、とても可愛らしい姿を見られるのが楽しみです。

 

さて今回は、女性の礼装着物の一つである「留袖」についてお伝えいたします。
留袖を着る機会はめったにないので、知っているようで知らないことも多いですよね。
留袖の種類や着用マナーなどについてまとめました。

 

 

 

 

留袖とは?

留袖」は、結婚後に振袖の袖を切る(袖を留める)習わしが由来となっています。
現在でも振袖の袖をつめて結婚後に着用する場合がありますが、「訪問着」の扱いになります。
留袖には「黒留袖」と「色留袖」があります。黒留袖はすぐにそれとわかりますが、
色留袖は一見すると訪問着と区別がつきにくいかもしれません。

 

訪問着や付け下げとのちがいは、上半身に柄が描かれているかどうかを見ればすぐにわかります。
留袖の場合は、上半身と袖は無地で、裾にのみ絵柄が描かれています。
一方、訪問着や付け下げの場合は、襟や肩、袖などにも絵柄が入ります。
裾模様は縫い目をまたがって柄がつながる「絵羽模様」です。

 

また、留袖の生地は「しぼ」の細かい一越縮緬が一般的で、地模様は入っていません。
黒留袖は必ず紋入りで仕立てられます。
色留袖には紋入り・紋なしがあり、着用シーンが異なります。
現代の留袖は、重ね着しているように見せる「比翼仕立て」になっているのが一般的です。
昔は、実際に白羽二重の着物を重ね着していました。
慶事の着物ですので、「おめでたいことが重なるように」という意味がこめられています。

 

 

 

 

「黒留袖」は既婚女性の第一礼装

黒留袖は既婚女性の「正礼装(第一礼装)」に位置付けられます。
そのため、必ず五つ紋が入ります(背中・両胸・両袖)。
家紋の入れ方にはいくつか方法がありますが、黒留袖の場合は、最も格の高い「染め抜き日向紋(ひなたもん)」が一般的です。
反物に白丸を染め抜き、後で紋を描き入れる「石紋(こくもん)」という方法もありますが、染め抜き日向紋よりも格下とされます。
色無地着物などに使われる「縫い紋」は、略礼装またはカジュアル向きのため、留袖には使いません。

 

黒留袖を着用するシーンは、結婚式に新郎・新婦の親族(母親)として出席する場合です。
最近では少なくなりましたが、仲人や媒酌人として結婚式に出席するときには、婦人も黒留袖を着用します。
ゲストとして結婚式に出席する時には、黒留袖は着用しません。
着物に慣れていない場合、「長時間着用するのはつらい…」という方もいらっしゃいますので、
新郎・新婦の母が洋装で出席するケースも増えています。

 

実際に挙式準備をする時には、新郎側と新婦側の親族の服装が同格になるように、両家で事前に相談することが大切です。
古い話になりますが、私自身(スタッフ・高橋)の結婚式で、実母が「ぜひ留袖を着たい」と希望したので、
義母に恐る恐る相談したのを覚えています。
「もちろんいいですよ」と快く留袖で出席してくれてとても嬉しく思いました。

 

若かった当時の私の感覚では、黒留袖ってちょっと地味な印象で、どうしてこれが特別な着物なの?と思っていました。
実際に結婚式で黒留袖を着た二人の母を見て、「黒」の持つ凛とした美しさと厳かな雰囲気に驚きました。
時は流れて、私自身にも年頃の娘ができ、留袖が着たいと言った母の気持ちがわかるようになりました。
いつか我が子が「晴れの門出」を迎える時には、やはり特別な日の衣装である「黒留袖」で祝えたらと思います。

 

 

 

 

「色留袖」の着用シーン

色留袖は、未婚・既婚を問わず着ることができる留袖です。
色留袖も黒留袖と同じく「礼装」ですが、紋の入れ方によって格が変わるため、それぞれ着用シーンも異なります。
五つ紋の色留袖は、黒留袖と同格の「第一礼装」の扱いとなります。
新郎・新婦の姉妹などが結婚式に出席する場合にぴったりの装いです。同じ第一礼装として振袖もありますが、着用は未婚女性に限られます。
色留袖なら既婚女性でも着られるというメリットがあります。

 

このほか、叙勲や褒章を受けて参内する場合や、祝賀会などの格式の高い場面に着用します。
三つ紋や一つ紋の色留袖は、「準礼装・略礼装」の位置づけとなります。
結婚式に親戚として出席する場合に適しています。
本来はゲストとして出席する場合にも着られますが、留袖は親族側のイメージがありますので、
親族側の出席者とのバランスを考えて着用すると良さそうです。

 

五つ紋や三つ紋の色留袖は格が高すぎるので、入学式・卒業式などには不向きです。
一つ紋または紋なしの色留袖で、比翼仕立てでなければ、入学式・卒業式にも着用できます。

 

 

 

 

留袖に合わせる帯や小物

留袖は「礼装」ですので、紋の数に関係なく礼装用の「袋帯」を合わせます。

 

黒留袖には、「第一礼装」にふさわしい格調高い色柄の袋帯を合わせ、帯揚げ・帯締めも白で統一します(金糸入りなどはOK)。
長襦袢は色のついていない礼装用の白の長襦袢を着用します。
半襟も、色柄や刺繍の入っていない真っ白な物をつけます。
色留袖を礼装として着用する場合も、黒留袖と同様のコーディネートになります。
一つ紋または紋なしの色留袖を「訪問着」のような感覚で着る場合には、
帯揚げ・帯締め・半襟などの小物類を、もう少しカジュアルなコーディネートにして大丈夫です。

 

 

いかがでしたか?
訪問着や付け下げほど身近ではありませんが、それだけに特別感のある「留袖」も素敵ですよね!

 

 

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[いせやグループ 広報担当 高橋]

 

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